青色申告決算書の書き方|4ページを埋める順番とつまずく判断ポイント
1年分の帳簿はつけ終わった。
あとは青色申告決算書を書くだけ──と用紙を開いて、1ページ目の損益計算書で手が止まる。
「売上はどこから持ってくるの?」「減価償却費って、どこで計算するの?」
これは書き方の問題ではなく、書く順番の問題です。
決算書は1ページ目から順に埋めるようには作られていません。
この記事では、決算書を迷わず埋めるための順番と、途中で出てくる「これはどっち?」という判断のポイントを、ひとつずつ整理します。
先に結論
- 決算書は4ページ。2 → 3 → 1 → 4ページの順に埋めると止まらない
- 1ページ目の損益計算書は、2・3ページ目の数字を転記して作るページ
- 家事按分は、経費なら按分後の金額、減価償却資産なら事業専用割合の欄で反映
- 青色申告特別控除は所得が上限。赤字なら0円
- 損益計算書と貸借対照表の所得は必ず一致する。合わなければ転記ミス
まず全体像 ── 決算書は4ページ、数字は「転記」でつながっている
青色申告決算書(一般用)は4ページで構成されています。 それぞれのページが独立しているわけではなく、あるページの合計を別のページに転記する関係になっています。
| ページ | 主な中身 | 数字の出どころ |
|---|---|---|
| 1ページ | 損益計算書 | 2・3ページから転記+経費帳 |
| 2ページ | 月別売上・仕入、給料賃金・地代家賃の内訳、青色申告特別控除額の計算 | 帳簿(売上帳・経費帳) |
| 3ページ | 減価償却費の計算、利子割引料・税理士報酬の内訳 | 固定資産台帳・領収書 |
| 4ページ | 貸借対照表(資産負債調)、製造原価の計算 | 帳簿の残高+1ページの所得 |
表を見るとわかるとおり、1ページ目は2・3ページ目の結果を集める場所です。 だから1ページ目から書き始めると、「売上の合計がまだ出ていない」「減価償却費を計算していない」で止まってしまいます。
書く順番は 2 → 3 → 1 → 4 ページ
材料を先に揃えて(2・3ページ)、集計して(1ページ)、最後に残高で検算する(4ページ)。この順なら、転記の流れに沿って一方向に進めます。
STEP1 2ページ目 ── 売上と内訳を埋める
月別売上(収入)金額
1月から12月まで、月ごとの売上を記入します。帳簿の月計をそのまま写せば大丈夫です。
締め日を20日や25日にしている場合でも、合計は1月1日から12月31日までの金額にします。 国税庁の説明書では、2月〜11月は帳簿の月計をそのまま書き、ずれは1月と12月の欄で調整してよいとされています。
ここで出た「計」の金額が、1ページ目の売上(収入)金額になります。
地代家賃の内訳
事務所や自宅兼事務所の家賃を経費にしている場合は、支払先と金額を記入します。 自宅兼事務所で家事按分している場合は、「左のうち必要経費算入額」の欄に按分後の事業分を書きます。
按分の割合の決め方は 家事按分は何%にする?割合の決め方と実例 にまとめています。
青色申告特別控除額の計算
2ページ目の下部で、控除額を計算します。ここでいちばん見落とされやすい判断があります。
控除額は「所得」が上限です。
65万円控除の要件を満たしていても、青色申告特別控除前の所得が40万円なら、控除額は40万円です。赤字なら0円になります。控除で所得をマイナスにすることはできません。
開業1年目で経費が先行している場合は、ここが0円になることも珍しくありません。それでも青色申告の意味はあり、赤字を翌年以降3年間繰り越せます。
ここで計算した控除額は、1ページ目の「青色申告特別控除額」の欄に転記します。
STEP2 3ページ目 ── 減価償却費を計算する
10万円以上の備品(パソコン、カメラ、車など)を持っている場合は、3ページ目の「減価償却費の計算」を埋めます。 ここで出た合計が、1ページ目の「減価償却費」になります。
1行に1資産を書く
資産ごとに、名称・取得年月・取得価額・償却方法・耐用年数などを記入します。 償却方法を税務署に届け出ていなければ、定額法になります。
家事按分は「事業専用割合」の欄で
プライベートでも使うパソコンなどは、表の中にある「事業専用割合」の欄に割合を書きます。 本年分の償却費にこの割合をかけた金額が「本年分の必要経費算入額」になり、これが経費として1ページ目に転記されます。
つまり、減価償却する資産の家事按分は、取得価額を減らすのではなく、この欄で行うのが決算書の作りです。
少額減価償却資産・一括償却資産も3ページに書く
青色申告の特例で一括経費にした資産(10万円以上40万円未満。2026年3月31日以前の取得は30万円未満)も、3ページ目に記入します。 摘要欄に「措法28の2」と書くのが決まりです。
20万円未満で3年に分けて経費にする「一括償却資産」を選んだ場合は、償却率の欄に「1/3」と書きます。
| 処理の種類 | 3ページでの書き方 |
|---|---|
| 通常の減価償却 | 償却方法(定額法など)・耐用年数・償却率を記入 |
| 少額減価償却資産の特例 | 摘要に「措法28の2」 |
| 一括償却資産(3年均等) | 償却率に「1/3」 |
| 中古で取得した資産 | 摘要に中古である旨。耐用年数は見積もりか簡便法で |
資産ごとの判断に迷ったときは、 iPadの耐用年数と勘定科目 や iPhoneは固定資産?「10万円の壁」 で具体例を解説しています。
STEP3 1ページ目 ── 損益計算書に集める
材料が揃ったので、ここでようやく1ページ目です。やることは転記と、経費の記入だけです。
- 売上(収入)金額 ── 2ページ目の月別売上の「計」を転記
- 減価償却費 ── 3ページ目の「本年分の必要経費算入額」の計を転記
- その他の経費 ── 経費帳の科目ごとに、決算整理後の金額を記入
- 青色申告特別控除額 ── 2ページ目で計算した金額を転記
経費欄に科目がないときは
損益計算書の経費欄には、印字されている科目のほかに空欄の行があります。 「ソフトウェア利用料」「新聞図書費」など印字にない科目は、空欄に科目名を書き込んで使います。
科目をどう分けるか迷ったら、 経費にできるもの一覧|勘定科目と判断基準 で確認できます。
家事按分した経費は「按分後」の金額で
通信費や水道光熱費など、プライベートと兼用している経費は、事業分として按分したあとの金額を書きます。 支払った総額をそのまま書かないよう注意してください。
STEP4 4ページ目 ── 貸借対照表で検算する
最後が貸借対照表です。期首(1月1日)と期末(12月31日)の資産・負債の残高を書きます。 65万円・55万円の控除を受けるには、このページの添付が必須です。
個人事業主ならではの3つの科目
| 科目 | 意味 | 書き方のポイント |
|---|---|---|
| 事業主貸 | 事業のお金を個人で使った | 期末欄だけに1年分の合計を書く |
| 事業主借 | 個人のお金を事業に入れた | 期末欄だけに1年分の合計を書く |
| 元入金 | 事業の元手 | 期首と期末は同じ金額 |
事業主貸・事業主借の考え方は 個人立替とは?事業主借・事業主貸の違い で詳しく解説しています。
最後の検算 ── 所得金額が一致するか
貸借対照表の右下に「青色申告特別控除前の所得金額」を書く欄があります。 ここには1ページ目の同じ欄の金額を書きます。
損益計算書と貸借対照表の所得金額は、必ず一致します。
貸借対照表の資産合計と、負債・資本の合計が合わない場合は、どこかに記帳漏れ・二重記帳・転記ミスがあります。4ページ目を最後に書くのは、ここが全体の検算になるからです。
開業1年目の期首欄は
開業した年は、期首の欄に開業日時点の残高を書きます。 開業前に準備で使ったお金は「開業費」として資産に計上している場合があり、その扱いは 開業費の償却はいつやる? で解説しています。
65万円・55万円・10万円 ── 控除額を分ける要件
せっかく決算書を書くなら、控除は最大まで受けたいところです。控除額は次の条件で決まります。
| 控除額 | 必要な条件 |
|---|---|
| 65万円 | 複式簿記 + 損益計算書・貸借対照表の添付 + 期限内申告 + e-Taxで提出(または優良な電子帳簿) |
| 55万円 | 複式簿記 + 損益計算書・貸借対照表の添付 + 期限内申告 |
| 10万円 | 簡易な記帳(損益計算書の添付は必要) |
55万円と65万円を分けるのは、e-Taxで出すかどうかです。書く内容は同じなので、10万円の差を取りにいかない理由はありません。 なお、還付を受ける申告でも期限内の提出が要件なので、期限を過ぎると控除額が下がります。
令和9年分から、この区分が変わります。
令和8年度の税制改正で、青色申告特別控除が見直されました。令和9年(2027年)分以降は、e-Taxで提出すれば65万円、さらに優良な電子帳簿などの要件を満たせば最大75万円になります。一方、紙で提出した場合は10万円に下がる予定です。
今回(令和8年分)の申告は従来どおりですが、来年以降も控除を維持するには、e-Taxに慣れておくのが安全です。
手書きで書くか、ソフトで作るか
ここまで読んで「転記が多いな」と感じたと思います。実際、決算書のミスの多くは転記の段階で起きます。
会計ソフトを使えば、帳簿から4ページ分が自動で作られ、損益計算書と貸借対照表の所得も自動で一致します。e-Taxでの提出まで一貫してできるので、65万円控除の要件も満たしやすくなります。
手書きや国税庁の作成コーナーで作る場合でも、1ページ目と4ページ目の数字を先に確認できると安心です。 当サイトの「青色申告かんたん会計」では、つけた帳簿から損益計算書と貸借対照表を画面で確認できます。決算書そのものを出力する機能はありませんが、転記元の数字を整理する用途には使えます。
よくある疑問
Q. 決算書の用紙はどこで手に入る?
税務署の窓口でもらえるほか、国税庁のホームページからダウンロードできます。 国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を使えば、画面の案内に沿って入力するだけで作成できます。
Q. 売上がほとんどない年も決算書は必要?
青色申告で55万円・65万円の控除を受けるには、損益計算書と貸借対照表の添付が必要です。 赤字の年も、翌年以降に損失を繰り越すために、期限内に決算書を付けて申告しておくのが安全です。
Q. 4ページ目の「製造原価の計算」は書く必要がある?
製造業などで原価計算をしている場合だけです。 デザイン・制作・開発・サービス業などでは、通常は空欄のままで問題ありません。
Q. 貸借対照表を書かないとどうなる?
控除額が10万円になります。55万円・65万円の控除は、貸借対照表の添付が要件だからです。 複式簿記で記帳していれば数字は揃っているはずなので、書かずに出すのはもったいない選択です。
まとめ ── 順番さえ守れば、決算書は止まらない
- 決算書は2 → 3 → 1 → 4ページの順に埋める
- 1ページ目の損益計算書は2・3ページ目の転記で作る
- 家事按分は、経費なら按分後の金額、減価償却資産なら事業専用割合の欄
- 青色申告特別控除は所得が上限。赤字なら0円
- 4ページ目で所得金額の一致を確認して検算する
- 65万円控除にはe-Tax。令和9年分からは紙だと10万円になる予定
決算書が難しく見えるのは、中身が難しいからではなく、どこから書けばいいかが用紙に書かれていないからです。 順番がわかれば、あとは帳簿の数字を写していく作業になります。
申告全体の流れは 個人事業主の確定申告のやり方|5ステップ完全ガイド で確認できます。
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会計ソフトなら、帳簿から青色申告決算書の4ページを自動作成し、e-Taxでの提出まで一貫して行えます。転記ミスの心配がなく、65万円控除の要件も満たしやすくなります。
※ 料金・キャンペーンなどの最新条件は各公式サイトでご確認ください。