2026.09.12

個人事業主が使える所得控除の一覧|令和7年改正対応・16種類まとめ

経費はしっかり集計した。帳簿もつけた。
でも、税金を減らせる余地はまだ残っています。

それが所得控除です。

経費と違って、事業と関係のない支出でも差し引けるものがあります。 国民健康保険料、医療費、生命保険料、ふるさと納税──こうした個人の支出が、そのまま税金を減らしてくれる。

しかも令和7年分から、基礎控除や扶養控除の金額が大きく変わりました。 去年と同じつもりで書くと、控除しそこねる可能性があります。

この記事では、個人事業主が使える所得控除を16種類すべて一覧にまとめました。

先に結論

まず整理 ── 経費と所得控除は「引く場所」が違う

混同されやすいところなので、先に整理しておきます。 経費と所得控除は、税金を減らすという結果は同じですが、計算のどの段階で引くかが違います。

経費 所得控除
引く場所 売上から引く 所得の合計から引く
対象 事業に関係する支出のみ 個人の事情に応じた支出など
通信費、消耗品費、地代家賃 国民健康保険料、医療費、生命保険料
帳簿 記帳が必要 記帳は不要(申告書に記載)

計算の流れにすると、こうなります。

🧮

売上 − 経費 − 青色申告特別控除 = 事業所得

事業所得 − 所得控除 = 課税所得(ここに税率をかける)

つまり所得控除は、経費を引いたあとの段階でもう一度引けるもの。国民健康保険料のように帳簿に載せない支出でも、ここで差し引けます。

「これは経費になる?」という判断に迷ったときは、 経費にできるもの一覧|勘定科目と判断基準 を先に確認してください。経費にならないものでも、所得控除には該当することがあります。

所得控除の一覧 ── 16種類の早見表

令和7年分の確定申告で使える所得控除は、次の16種類です。 自分に当てはまるものがないか、まず一通り眺めてみてください。

控除の名前 控除額の目安 こんな人
基礎控除 58万〜95万円 ほぼ全員(所得により変動)
社会保険料控除 支払額の全額 国保・国民年金を払っている
小規模企業共済等掛金控除 掛金の全額 小規模企業共済・iDeCo加入者
医療費控除 最高200万円 年間の医療費が10万円を超えた
寄附金控除 寄附額 − 2,000円 ふるさと納税をした
生命保険料控除 最高12万円 生命保険・医療保険に加入
地震保険料控除 最高5万円 地震保険に加入
配偶者控除 最高38万円 配偶者の所得が58万円以下
配偶者特別控除 最高38万円 配偶者の所得が58万円超133万円以下
扶養控除 38万〜63万円 16歳以上の扶養親族がいる
特定親族特別控除
令和7年 新設
最高63万円 19歳以上23歳未満の親族がいる
障害者控除 27万〜75万円 本人・家族が障害者手帳を持つ
ひとり親控除 35万円 ひとり親で所得500万円以下
寡婦控除 27万円 死別・離婚後の要件を満たす
勤労学生控除 27万円 働きながら学校に通っている
雑損控除 損失額による 災害・盗難で損害を受けた

金額は令和7年分の一般的なケースです。細かい要件で変わるものもあるので、目安として見てください。

令和7年分の改正 ── ここが変わりました

去年までの感覚で書くと間違えるポイントが3つあります。順に見ていきます。

① 基礎控除が段階制になった(最大95万円)

これまで一律48万円だった基礎控除が、合計所得金額に応じて変わるようになりました。 所得が少ない人ほど控除が大きくなる仕組みです。

合計所得金額 基礎控除額
132万円以下95万円
132万円超 336万円以下88万円
336万円超 489万円以下68万円
489万円超 655万円以下63万円
655万円超 2,350万円以下58万円

なお、95万円・88万円・68万円・63万円は令和7年分と8年分だけの措置です。 令和9年分以降は、合計所得2,350万円以下で一律58万円になる予定です。

この改正で、事業所得だけの方が所得税の確定申告を要するラインも上がりました。 詳しくは 確定申告のやり方|5ステップ完全ガイド で解説しています。

② 配偶者控除・扶養控除の所得要件が58万円に

いわゆる「103万円の壁」が動きました。 配偶者控除や扶養控除の対象になる合計所得金額の上限が、48万円から58万円に引き上げられています。

給与収入に換算すると、これまでの103万円が123万円になりました。 給与所得控除の最低保障額が55万円から65万円に上がったことと合わせた変更です。

家族がパートやアルバイトをしている場合、去年は扶養から外れていた方が、今年は対象になるかもしれません。もう一度確認しておく価値があります。

③ 特定親族特別控除が新設された

19歳以上23歳未満の親族について、合計所得が58万円を超えて123万円以下の場合に使える控除が新しくできました。

これまでは所得が要件を1円でも超えると、扶養控除が一気にゼロになっていました。新しい控除は、所得が増えるにつれて控除額が段階的に減る形なので、働きすぎて損をする状況が緩和されます。

大学生くらいのお子さんがアルバイトをしている家庭は、対象になる可能性が高いので確認してください。

節税効果が大きい控除 ── 個人事業主が優先すべき3つ

16種類のうち、多くの個人事業主にとって金額が大きくなりやすいものを3つ挙げます。

社会保険料控除 ── 意外と見落としがち

国民健康保険料と国民年金保険料は、1年間に払った全額が控除されます。上限はありません。

国民健康保険料は所得に応じて上がるため、年間数十万円になることも珍しくありません。ここを書き忘れると影響は小さくありません。

忘れやすいのが次のケースです。

💡

国民健康保険料は控除証明書が届きません。

国民年金は日本年金機構から控除証明書が届きますが、国民健康保険料は自治体によって送付されないことがあります。納付書の控えや口座の記録から自分で集計してください。金額が分からない場合は、市区町村の窓口で年間納付額を確認できます。

小規模企業共済等掛金控除 ── 掛金が手元に残る

個人事業主の節税として、もっとも効率がよいのがここです。理由は、払ったお金が消えずに自分の資産として積み立てられるから。

制度 掛金の上限 性格
小規模企業共済 月7万円(年84万円) 個人事業主の退職金づくり
iDeCo(第1号被保険者) 月6.8万円(年81.6万円) 老後資金の積立・運用

いずれも掛金の全額が所得控除の対象です。両方に加入すれば、年間165万円以上を控除できる計算になります。

ただし、どちらも原則として途中で引き出せません。小規模企業共済は加入期間が短いと元本割れすることがあり、iDeCoは60歳まで引き出せません。手元の資金に余裕がない状態で上限まで払うと、生活のほうが苦しくなります。節税額だけで判断しないでください。

なお、iDeCoの第1号被保険者の上限は、2027年1月から月7.5万円に引き上げられる予定です。

医療費控除 ── 10万円を超えたら

1年間に払った医療費が10万円を超えた分が控除されます(総所得金額が200万円未満の方は、総所得金額の5%を超えた分)。上限は200万円です。

対象になるのは本人の分だけではありません。生計を一にする家族の医療費を合算できます。家族全員分を集めると10万円を超えることは、意外とよくあります。

医療費が10万円に届かない場合は、セルフメディケーション税制という選択肢もあります。対象の市販薬の購入額が年12,000円を超えた分(上限88,000円)を控除できる制度です。ただし医療費控除との併用はできず、どちらか一方を選びます。

ふるさと納税の注意点 ── ワンストップ特例は使えません

ふるさと納税は、寄附金控除として申告します。ここで個人事業主が必ず引っかかる落とし穴があるので、独立して書いておきます。

会社員がよく使う「ワンストップ特例」は、確定申告をしない人のための制度です。個人事業主は確定申告をするので、この特例は使えません。

申請書を出したかどうかにかかわらず、確定申告をした時点でワンストップ特例は無効になります。確定申告書に寄附金控除を記載しないと、控除がまるごと受けられません。

自治体から届く「寄附金受領証明書」を保管しておき、申告書に記載してください。ポータルサイトが発行する年間の寄附額証明書でも代用できます。

⚠️

控除の上限額は所得によって変わります。

ふるさと納税の実質負担が2,000円で済む上限額は、その年の所得で決まります。個人事業主は年末まで所得が確定しないため、会社員より見積もりが難しい面があります。上限を超えた分は自己負担になるので、年末に近い時点で見込みを立ててから寄附するほうが安全です。

青色申告特別控除は所得控除ではありません

よくある誤解なので、はっきり書いておきます。 青色申告特別控除(最大65万円)は、所得控除には含まれません。

これは事業所得を計算する段階で差し引くものです。上の計算式でいうと、所得控除より前の段階にあります。

つまり両方を使えます。青色申告特別控除65万円を引いたうえで、さらに基礎控除も社会保険料控除も引ける。どちらか一方しか使えない、ということはありません。

65万円の控除を受けるには複式簿記での記帳とe-Taxでの提出が必要です。要件は 青色申告とは?白色との違い にまとめています。

控除を受けるために必要な書類

所得控除は、帳簿ではなく確定申告書に直接記載します。そのため、根拠になる書類を年内に集めておくことが大切です。

控除 必要な書類 入手時期
社会保険料控除 国民年金保険料控除証明書/国保の納付額 11月ごろ郵送
小規模企業共済等掛金控除 掛金払込証明書 11月〜12月ごろ郵送
生命保険料控除 保険料控除証明書 10月ごろ郵送
地震保険料控除 保険料控除証明書 10月ごろ郵送
医療費控除 医療費控除の明細書(自分で作成) 領収書を年間通じて保管
寄附金控除 寄附金受領証明書 寄附のつど届く

控除証明書は秋に届いて、申告の時期には行方不明になりがちです。届いたら1か所にまとめておくだけで、2月の自分がずいぶんラクになります。

よくある疑問

Q. 控除証明書をなくしてしまいました

再発行できます。国民年金は「ねんきん加入者ダイヤル」、生命保険や小規模企業共済は各社の窓口に連絡してください。 国民健康保険料は証明書がなくても、年間の納付額が分かれば申告できます。

Q. 家族の分の保険料を払いました。誰の控除になりますか?

実際に払った人の控除になります。生計を一にする家族の国民年金や国民健康保険を代わりに払ったなら、払った人の申告書に記載します。 所得が高いほうが払うと、税率が高いぶん節税効果も大きくなります。

Q. 所得控除が所得より多い場合はどうなりますか?

課税所得はゼロになり、所得税はかかりません。ただし引ききれなかった分を翌年に繰り越すことはできません。 なお、税額がゼロでも申告そのものは必要です。赤字の繰越や各種手続きに影響します。

Q. 住民税でも同じ控除が使えますか?

おおむね同じ控除が使えますが、金額は所得税と異なります。たとえば基礎控除や扶養控除の額は住民税のほうが小さく設定されています。 確定申告をすれば住民税にも自動的に反映されるので、別途申告する必要はありません。

Q. 経費にも所得控除にもできる支出はありますか?

両方に計上することはできません。たとえば自宅兼事務所の火災保険料を経費(損害保険料)にした場合、同じ金額を地震保険料控除に使うことはできません。 按分している場合は、事業分を経費、残りを所得控除、という分け方になります。

まとめ ── 経費を締めたあと、もう一段ある

経費の集計が終わると、つい「これで終わり」と思ってしまいます。 でも所得控除は、そこからもう一段ぶん税金を減らせる場所です。しかも今年は改正で金額が動いています。

秋のうちに控除証明書を集めておけば、2月に慌てずに済みます。まずは自分に当てはまる控除がいくつあるか、一覧を眺めるところから始めてみてください。

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※ 控除額や要件は個別の事情で変わります。判断に迷う場合は税務署または税理士にご確認ください。