2026.06.23(2026.09.04 更新)

給与所得はどうする?個人事業主が会社員も兼業しているときの確定申告

個人事業主として開業したけど、会社員やパートとしても働いている。
こういう「兼業」の人、実はかなり多いです。

帳簿は事業所得だけをつければいい。
それは前回の記事で分かった。

でも、次に出てくる疑問がこれ。

「確定申告のとき、給与所得をどうやって合算するの?」

年末調整は勤務先がやってくれるけど、それとは別に確定申告もするの?
給与所得控除と青色申告特別控除は両方使えるの?
会計ソフトにはどう入力するの?

この記事では、筆者が実際に調べて「なるほど」と思った仕組みを、なるべくシンプルにまとめます。

先に結論

まず全体の流れを理解する

個人事業主+給与所得がある場合の1年間の流れは、ざっくりこうです。

  1. 日々の帳簿づけ ── 事業所得(売上・経費)だけを記録する
  2. 年末調整(12月〜1月) ── 勤務先が給与所得の税金を精算してくれる
  3. 源泉徴収票を受け取る(1月) ── 勤務先から届く。確定申告に使う
  4. 確定申告(2月〜3月) ── 事業所得と給与所得を合算して申告する

ポイントは「年末調整と確定申告は別物で、両方やる」ということ。 年末調整は給与所得の分だけ。確定申告で事業所得を加えて、トータルの税金を計算します。

年末調整はどうする?──勤務先で普通に受ける

個人事業主であっても、どこかに雇われて給与をもらっている場合は、その勤務先で年末調整を受けます。 正社員でもパートでも、雇用されていれば年末調整の対象です。

勤務先から「扶養控除等申告書」などの書類を渡されたら、普通に記入して提出してください。 ここで生命保険料控除や扶養控除などが適用されて、給与にかかる税金が精算されます。

ただし、年末調整だけでは終わりません。 事業所得がある個人事業主は、年末調整に加えて確定申告が必要です。

💡

年末調整で申告した控除は、確定申告でも反映される。

年末調整で生命保険料控除などを申告した場合、その情報は源泉徴収票に記載されます。確定申告書にはその数字を転記するだけ。二重に控除を受けてしまうことにはなりません。

確定申告ではどうやって合算する?

確定申告書には、所得の種類ごとに記入する欄があります。 やることはシンプルで、以下の2つを別々に記入して合算するだけです。

事業所得 → 青色申告決算書から転記

普段の帳簿で計算した「売上 − 経費 − 青色申告特別控除」の金額を、確定申告書の「事業所得」の欄に記入します。 会計ソフトを使っていれば、この数字は自動で計算されます。

給与所得 → 源泉徴収票から転記

勤務先から受け取った源泉徴収票の「支払金額」「給与所得控除後の金額」「源泉徴収税額」を、確定申告書の「給与所得」の欄に転記します。

複数の勤務先がある場合(タイミー含む)は、すべての源泉徴収票の金額を合算。

合算 → 所得控除を引いて税額を計算

事業所得と給与所得を合算した「総所得金額」から、基礎控除・社会保険料控除などを引いて課税所得を計算。 そこに税率をかけて所得税を出す。 すでに源泉徴収で払った税金があれば、その分を差し引く。

払いすぎていれば還付、足りなければ追加で納税。この計算も会計ソフトがやってくれます。

ダブル控除のメリット ── 実は兼業は税金面で有利

個人事業主+給与所得がある人は、実は税金面で有利な立場にあります。 理由は、2つの控除を同時に使えるから。

控除 対象 控除額
給与所得控除 給与所得 最低65万円(収入に応じて増加)
青色申告特別控除 事業所得 最大65万円

たとえば、給与収入200万円+事業所得100万円の場合。

給与所得:200万円 − 給与所得控除68万円 = 132万円
事業所得:100万円 − 青色申告特別控除65万円 = 35万円
合計所得:132万円 + 35万円 = 167万円

もし給与収入だけで300万円稼いでいたら、給与所得控除は98万円で、所得は202万円。 兼業のほうが合計所得が低くなり、税金が少なくなるケースがあります。

📌

令和7年分から控除額が引き上げられました。

給与所得控除の最低保障額が55万円から65万円になり、適用される給与収入の範囲も年190万円以下まで広がりました。あわせて基礎控除も一律48万円から、合計所得金額に応じて最大95万円までの段階制に変わっています(95万円・88万円・68万円・63万円は令和7年分・8年分限定の措置)。

給与収入が少なめの方ほど、改正前より手取りベースで有利になっています。上の計算例のように給与収入200万円の場合は、控除額の計算式が変わらないため68万円のままです。

💡

「兼業は損」とは限らない。

「本業に集中したほうがいい」は経営的には正しいこともありますが、税金の計算上は兼業のほうが有利になることがある。特に事業がまだ軌道に乗っていない初期は、給与所得がある安心感+ダブル控除の恩恵は大きいです。

会計ソフトでの給与所得の扱い方

「帳簿に入れない」とは言ったものの、実際に事業用口座に給与が振り込まれた場合はどうするのか。 これ、最初に迷うポイントです。

事業用口座に給与が入金された場合

事業用として登録している銀行口座に勤務先からの給与が振り込まれた場合、帳簿上は「事業主借」として処理します。

事業主借とは、「事業以外のお金が事業用口座に入ってきた」という意味の勘定科目です。 売上でも雑収入でもなく、あくまで「個人のお金が事業口座を経由しただけ」という扱い。 損益計算書には影響しません。

事業用口座以外に入金された場合

プライベート用の口座に給与が振り込まれている場合は、帳簿への入力自体が不要です。 事業の帳簿は事業用口座の入出金だけを記録するので、別口座の入金は関係ありません。

確定申告のときだけ源泉徴収票の数字を入力

freeeやマネーフォワードで確定申告書を作成する際に、「給与所得がありますか?」という質問が出てきます。 そこで源泉徴収票の数字を入力すれば、あとは自動で計算されます。 日々の帳簿づけの段階では、給与のことを気にする必要はありません。

【実体験】筆者が最初に迷ったこと

筆者は個人事業主として開業しつつ、会社員としても働いています。 開業した年に一番戸惑ったのは、「2つの収入をどう管理すればいいのか」でした。

帳簿ソフトを開いて、「給料はどの勘定科目に入れるんだろう?」と考えた。 売上? 雑収入? 色々調べた結果、答えは「帳簿には入れない」。拍子抜けするほどシンプルでした。

日々やることは事業の売上と経費を帳簿につけるだけ。 給与は年末に源泉徴収票が届いたら、確定申告書に転記する。それだけ。

分かってしまえば簡単ですが、「給与所得と事業所得の関係」を体系的に説明してくれる記事がなかなかなくて、最初はかなり時間を使いました。 この記事が、同じように迷っている兼業の方の参考になれば。

よくある疑問

Q. 事業が赤字のとき、給与所得と相殺できる?

はい、できます。これが青色申告の大きなメリットの一つです。 事業所得が赤字の場合、その赤字を給与所得と相殺(損益通算)できます。 結果として、給与から源泉徴収された税金の一部が還付される可能性があります。

開業初年度は経費が先行して赤字になりやすいので、このメリットは特に大きいです。

Q. 会社に副業がバレる?

確定申告で住民税の納付方法を「自分で納付」(普通徴収)にすれば、事業所得にかかる住民税は自宅に届きます。 会社経由で通知されないので、副業が会社に通知されるリスクを下げられます。 ただし、自治体によっては対応が異なる場合があるので、確実とは言い切れません。

Q. 勤務先で年末調整をしなかったらどうなる?

年末調整をしなかった場合、確定申告で給与所得の税金精算を自分で行うことになります。 手間が増えるだけで、結果は同じです。 ただし、年末調整を受けておいたほうが、確定申告の入力がシンプルになるので、受けられるなら受けてください。

Q. 個人事業主をやめて会社員一本に戻ったら?

廃業届を提出して、その年の事業所得を確定申告すれば完了です。 翌年からは給与所得だけになるので、会社の年末調整だけで済むようになります。 ただし、事業所得の赤字が残っている場合は、翌年以降も確定申告をして損失を繰り越すことができます(青色申告の場合)。

まとめ ── 兼業の確定申告は「分けて、合わせる」だけ

「兼業の確定申告は複雑そう」と思いがちですが、やることは「事業と給与を分けて記録し、申告書で合わせる」だけ。 会計ソフトを使えば、合算と税額計算は自動でやってくれます。 初めての確定申告は不安かもしれませんが、一度やってみると「意外とこれだけか」と感じるはずです。

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