iPhoneは固定資産?個人事業主が知るべき「10万円の壁」と経費処理のすべて
仕事用にiPhoneを買った。
帳簿に入力しようとして、手が止まる。
「これ、消耗品費で一括経費にしていいの? それとも固定資産?」
ネットで調べると「10万円未満なら消耗品費」「10万円以上なら減価償却」と書いてある。
でも最近のiPhoneは99,800円だったり149,800円だったり、ちょうど10万円の前後をウロウロしている。
この記事では、個人事業主がiPhoneやスマホを買ったときの経費処理を、金額帯ごとに整理します。
2026年4月に変わった少額減価償却資産の特例(上限40万円に拡大)にも対応しています。
先に結論
- 10万円未満(税込) → 「消耗品費」で全額一括経費。固定資産にならない
- 10万円以上40万円未満 → 青色申告なら「少額減価償却資産の特例」で一括経費にできる
- 40万円以上 → 固定資産として減価償却(耐用年数4年)
- プライベート兼用なら家事按分が必要
- ケース・充電器などの周辺アクセサリーは消耗品費でOK
「10万円の壁」── iPhoneの処理が変わるライン
個人事業主が何かを買ったとき、経費の処理方法は「いくらで買ったか」で決まります。 iPhoneも例外ではありません。
| 購入金額(税込) | 処理方法 | 勘定科目 |
|---|---|---|
| 10万円未満 | 全額を一括経費 | 消耗品費 |
| 10万円以上 20万円未満 |
①一括償却資産(3年均等) ②少額減価償却資産の特例(一括経費) ③通常の減価償却(4年) |
①②消耗品費 or 減価償却費 ③工具器具備品 |
| 20万円以上 40万円未満 |
①少額減価償却資産の特例(一括経費) ②通常の減価償却(4年) |
①消耗品費 or 減価償却費 ②工具器具備品 |
| 40万円以上 | 通常の減価償却(4年) | 工具器具備品 |
※ 少額減価償却資産の特例は青色申告者のみ利用可能。年間合計300万円まで。
※ 2026年4月以降に取得した資産から、特例の上限が30万円→40万円に拡大されています。
「税込」か「税抜」かで判定が変わる。
消費税の免税事業者は税込金額で判定します。課税事業者で税抜経理を採用している場合は税抜金額で判定。免税事業者のほとんどの個人事業主は「税込金額」で考えてください。iPhone 16eが99,800円(税込)なら、10万円未満なので消耗品費です。
iPhoneの機種別 ── 具体的にどう処理する?
実際の機種の価格で当てはめてみましょう(2026年6月時点のApple公式価格)。
iPhone 16e(128GB)── 99,800円 → 消耗品費
税込99,800円なので10万円未満。「消耗品費」として購入年に全額経費にできます。 固定資産にはなりません。帳簿への入力もシンプルです。
個人事業主がiPhoneを経費にするなら、この価格帯がもっとも処理がラクです。
iPhone 16(128GB)── 124,800円 → 少額減価償却資産の特例で一括OK
10万円以上なので、原則は固定資産として減価償却が必要です。 ただし、青色申告をしている個人事業主なら「少額減価償却資産の特例」を使って全額一括経費にできます(年間合計300万円まで)。
この特例を使えば、実質的に10万円未満と同じ処理で済みます。 帳簿への記入時に「措法28の2」(少額減価償却資産の特例適用)と備考欄に書いておくのが一般的です。
iPhone 16 Pro Max(1TB)── 249,800円 → 特例で一括OK
2026年4月以降は、少額減価償却資産の特例の上限が40万円未満に拡大されました。 249,800円のiPhone 16 Pro Maxでも特例の対象なので、青色申告なら一括経費にできます。
白色申告の場合は特例が使えません。
少額減価償却資産の特例は青色申告者限定の制度です。白色申告の場合、10万円以上のiPhoneは原則として耐用年数4年で減価償却する必要があります。これも青色申告を選ぶメリットの一つです。
もし減価償却する場合 ── 耐用年数は4年
少額減価償却資産の特例を使わず、通常の減価償却で処理する場合の話です。
スマホの耐用年数は、国税庁の耐用年数表に明記されていません。 「電話設備その他の通信機器」として10年とする考え方もありますが、実務上は「電子計算機(携帯用パソコン)」として耐用年数4年で処理するのが一般的です。 スマホの実態(アプリ開発、Webブラウジング、メールなど)はパソコンに近いので、4年で処理して問題ありません。
計算例:iPhone 16(124,800円)を7月に購入した場合
定額法・耐用年数4年で計算。
- 1年目:124,800円 × 1/4 × 6/12 = 15,600円
- 2年目:124,800円 × 1/4 = 31,200円
- 3年目:124,800円 × 1/4 = 31,200円
- 4年目:124,800円 × 1/4 = 31,200円
- 5年目:124,800円 × 1/4 × 6/12 = 15,600円
1年目は購入月から12月までの月割り。5年かけて全額が経費になります。 ……面倒ですよね。だからこそ、青色申告の少額減価償却資産の特例で一括経費にするのがおすすめです。
もう一つの選択肢 ── 一括償却資産(3年均等)
10万円以上20万円未満の資産には、「一括償却資産」という処理方法もあります。 購入金額を3年間で均等に経費にする方法です。
少額減価償却資産の特例との違いは以下の通り。
| 少額減価償却資産の特例 | 一括償却資産 | |
|---|---|---|
| 対象金額 | 40万円未満 | 10万円以上20万円未満 |
| 経費計上 | 購入年に全額 | 3年で均等割 |
| 月割り | 不要 | 不要(何月に買っても1/3ずつ) |
| 申告の条件 | 青色申告者のみ | 青色・白色どちらでもOK |
| 年間上限 | 300万円 | 上限なし |
青色申告をしているなら、一括経費にできる少額減価償却資産の特例のほうが明らかに有利です。 一括償却資産は、白色申告の方や、年間の少額減価償却資産の合計が300万円を超える場合の選択肢として覚えておいてください。
プライベートでも使うなら ── 家事按分を忘れずに
事業専用のiPhoneなら購入金額の100%が経費になりますが、プライベートと兼用している場合は家事按分が必要です。
たとえば、事業使用50%で99,800円のiPhoneを買った場合。 消耗品費として計上できるのは 99,800円 × 50% = 49,900円 です。
家事按分の割合は、事業での使用実態に基づいて決めてください。 「アプリ開発の動作確認に毎日使っている」なら50%以上でも根拠があります。 「たまに仕事のメールを確認する程度」なら20〜30%が妥当。
按分割合の根拠をメモしておく。
「iPhoneは事業50%:スクリーンタイムの記録上、業務アプリの使用時間が全体の約半分」──このようなメモが1行あれば、税務調査でも説明できます。
家事按分の割合の決め方は、こちらの記事で詳しく解説しています。
ケース・充電器・保護フィルムは?
iPhone本体と一緒に買うことが多いアクセサリー類。 ケース、充電器、保護フィルム、Apple Pencil(iPad用ですが参考まで)──これらは単価が10万円未満なので、「消耗品費」として全額経費にできます。
ただし、プライベート兼用のiPhone用のケースなら、本体と同じ割合で家事按分が必要です。 事業専用のiPhone用なら全額経費でOK。
【実体験】筆者がiPhoneの処理で迷ったこと
筆者が一番迷ったのは、「プライベート兼用のiPhoneを経費にしていいのか」でした。
仕事でも使っている。アプリの動作確認、ブログの表示チェック、取引先との連絡。 でも、日常的にSNSも見るし、電話もかけるし、写真も撮る。完全に仕事用とは言い切れない。
結論は「家事按分すればいい」でした。 100%経費にするのではなく、事業で使っている割合だけを経費にする。 そうすれば、プライベート兼用でもまったく問題ありません。
もう一つ迷ったのが「消耗品費か固定資産か」。 購入金額が10万円を超えていたので固定資産にしなければいけないのかと思いましたが、青色申告の少額減価償却資産の特例を使って一括経費にできることを知って、一気に楽になりました。
iPadやパソコンも同じルール?
はい、基本的に同じです。 「10万円の壁」と処理方法のルールは、iPhoneに限らずすべての減価償却資産に共通です。
| デバイス | 価格例 | 処理 |
|---|---|---|
| iPhone 16e | 99,800円 | 消耗品費(10万円未満) |
| iPhone 16 | 124,800円 | 少額減価償却資産の特例(青色) |
| iPad Air | 98,800円〜 | 消耗品費(10万円未満の場合) |
| iPad Pro | 168,800円〜 | 少額減価償却資産の特例(青色) |
| MacBook Air | 164,800円〜 | 少額減価償却資産の特例(青色) |
| メルカリで買ったPC | 金額による | 購入金額ベースで同じルール適用 |
中古で買った場合も、購入金額で判定します。メルカリで5万円のパソコンを買ったなら消耗品費。 メルカリで12万円のパソコンを買ったなら、少額減価償却資産の特例の対象です。
よくある疑問
Q. 分割払いで買った場合は?
分割払いでも、経費の判定は「購入金額の総額」で行います。 124,800円のiPhoneを24回払いで買っても、判定は124,800円ベース。 ただし、少額減価償却資産の特例で一括経費にした場合でも、支払いは分割のまま続きます(経費と支払いは別の話)。
Q. キャリアの実質価格(返却プログラム)の場合は?
キャリアの返却プログラム(いつでもカエドキプログラム等)で、実質負担が10万円未満になる場合があります。 この場合でも、経費の判定は「取得価額(購入時に支払った、または支払うことが確定した総額)」で行うのが原則です。 返却が前提のプログラムは実質的にリースに近いため、処理方法が異なる場合があります。判断が難しい場合は税理士に相談してください。
Q. 去年買ったiPhoneを今年から事業に使い始めた場合は?
プライベートで購入したiPhoneを事業で使い始める場合、その時点での時価(または未償却残高)で事業用資産として計上できます。 ただし計算が複雑になるので、金額が大きくなければ「今後の通信費だけを按分で経費にする」のが現実的な対応です。
Q. Apple Careは経費になる?
はい、事業用として使っているiPhoneのApple Careは経費にできます。 勘定科目は「損害保険料」または「支払手数料」。 プライベート兼用なら、本体と同じ割合で家事按分してください。
まとめ ── 青色申告なら、ほぼすべてのiPhoneは一括経費にできる
- 10万円未満のiPhone → 消耗品費で全額一括経費
- 10万円以上40万円未満 → 青色申告の少額減価償却資産の特例で一括経費
- 40万円以上 → 通常の減価償却(耐用年数4年)
- プライベート兼用なら家事按分を忘れずに
- ケース・充電器等のアクセサリーは消耗品費
- iPadもパソコンも同じルール。中古品も購入金額で判定
- 2026年4月から特例の上限が40万円未満に拡大
最近のiPhoneは10万円前後のモデルが多いので、消耗品費か少額減価償却資産の特例か、どちらかで処理できるケースがほとんどです。 固定資産として4年かけて減価償却する必要があるのは、40万円以上の場合だけ。 青色申告をしているなら、ほぼすべてのiPhoneは購入年に一括経費にできます。
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