2026.06.15

開業費の償却はいつやる?任意償却で節税するタイミングと仕訳を解説

開業費を帳簿に登録した。
でも、これっていつ経費になるの?──そんな疑問を持っていませんか。

開業費は登録しただけでは経費にならず、「償却」という手続きが必要です。
そして個人事業主には、この償却を自分の好きなタイミングで・好きな金額だけ行える仕組みがあります。

この記事では、開業費の償却の2つの方法と、節税に有利なタイミングの考え方を解説します。
※ 開業費の基本(何を入れるか・日付のルール)はこちらの記事で解説しています。

そもそも「償却」とは何か

償却とは、帳簿に載せた資産を「経費」に変換する手続きのことです。

開業費は税務上「繰延資産」として扱われます。 これは「いずれ経費にできるけど、登録した時点ではまだ経費ではない」という状態。 償却してはじめて、確定申告の「経費」として売上から差し引けるようになります。

つまり、開業費を帳簿に入れただけで安心してはいけない。 筆者も初年度の確定申告のとき、「あれ、開業費が経費に入ってない…?」と焦った経験があります。

開業費の償却方法は2つある

任意償却 均等償却(5年)
概要 好きな年に・好きな金額だけ経費にできる 5年間(60ヶ月)で毎年均等に経費にする
タイミング 完全に自由。0円の年があってもOK 毎年一定額を計上(変更不可)
節税の柔軟性 ◎ 利益が出た年に集中投下できる △ 利益が少ない年にも計上される
手間 毎年「いくら償却するか」を判断する必要あり 一度決めたら自動的に計上
おすすめの人 売上が年によって変動する人(ほとんどの個人事業主) 毎年安定した利益がある人
💡

結論:個人事業主は「任意償却」一択です。

開業初年度は赤字や低利益になることが多いので、利益が出た年まで温存できる任意償却のほうが圧倒的に有利。均等償却を選ぶメリットはほとんどありません。

任意償却の「いつやるか」戦略

任意償却の最大のメリットは、節税のタイミングを自分でコントロールできることです。 具体的にどう判断するか、パターン別に見ていきます。

パターン①:開業初年度は赤字 or 低利益 → 償却しない

開業1年目は売上が少なく、経費も多くなりがちです。 すでに赤字なら、これ以上経費を積んでも税金は減りません。 開業費はそのまま温存して、翌年以降に持ち越すのが正解です。

パターン②:2年目以降に利益が出た → ここで償却

売上が伸びて利益が出てきた年が、償却のベストタイミングです。 開業費を経費として投下することで、所得を圧縮して税金を減らせます。

たとえば開業費が30万円あり、2年目の事業所得が200万円なら:

パターン③:大きな売上が立った単発の年 → まとめて投下

フリーランスは年によって収入に波があります。 大型案件が入って一時的に利益が跳ねた年に、開業費を一気に償却してしまうのも有効な手です。

パターン④:開業費が少額(数万円) → 初年度に全額やってしまう

開業費が5万円以下くらいなら、節税効果も小さいので、初年度に全額償却して帳簿をスッキリさせたほうが管理が楽です。 温存するほどの金額でなければ、シンプルさを優先しましょう。

【実体験】初年度に償却しなかった理由

筆者の場合、開業費として計上した金額は約8万5千円でした。 名刺、ドメイン、書籍、セミナー参加費などの合計です。

開業1年目は売上が小さく、青色申告特別控除(65万円)だけで所得がほぼゼロになる見込みでした。 ここで開業費を償却しても、もともと税金がかからない状態なので意味がない。

そこで1年目は償却額をゼロにして、2年目以降に持ち越すことにしました。

この判断ができたのは、任意償却のルールを事前に知っていたから。 知らなければ「登録した年に全部経費にするもの」と思い込んで、節税のチャンスを無駄にしていたかもしれません。

開業費償却の仕訳(実際の帳簿の書き方)

償却するときの仕訳は、とてもシンプルです。

全額を一括で償却する場合

日付 借方 貸方 金額 メモ
12/31 開業費償却 開業費 85,000円 開業費の全額を任意償却

一部だけ償却する場合(例:半額)

日付 借方 貸方 金額 メモ
12/31 開業費償却 開業費 42,500円 開業費85,000円のうち半額を任意償却(残り42,500円は翌期以降に繰越)

日付は年末(12月31日)にするのが一般的です。 年間の利益が確定してから「いくら償却するか」を判断できるので、決算整理仕訳として年末に入れます。

⚠️

注意:「開業費」と「開業費償却」は別の勘定科目です。

「開業費」は貸借対照表の繰延資産。「開業費償却」は損益計算書の経費。この2つを混同すると帳簿が合わなくなるので気をつけてください。

確定申告書にはどう書くのか

開業費を任意償却した場合、確定申告書(青色申告決算書)では以下のように扱われます。

損益計算書

「開業費償却」は経費の一種として、損益計算書の「その他の経費」欄に記載します。 freee会計やマネーフォワードを使っていれば、仕訳を入れるだけで自動的に反映されます。

貸借対照表

未償却の開業費がまだ残っている場合は、貸借対照表の「繰延資産」の欄に残額が表示されます。 全額償却した年は、この欄がゼロになります。

会計ソフトでの開業費償却の入力方法

操作自体は「仕訳を1行入れるだけ」です。

  1. 日付を12月31日に設定
  2. 借方:「開業費償却」(経費科目)
  3. 貸方:「開業費」(繰延資産科目)
  4. 金額:償却したい金額を入力
  5. メモ:「任意償却」と書いておく

会計ソフトによっては「決算整理仕訳」や「年末調整」のメニューから入力する場合もあります。

freee会計 ── 開業費の償却も仕訳1本で完了

「決算」メニューから仕訳を入力するだけ。損益計算書・貸借対照表への反映は自動です。

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仕訳入力で「開業費償却 / 開業費」を登録。確定申告書への転記も自動で行われます。

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開業費償却のよくある疑問

Q. 任意償却に期限はある?

ありません。 極端な話、10年後に償却しても構いません。 ただし、あまりに長期間放置すると帳簿が複雑になるので、利益が出たタイミングで早めに処理するのが現実的です。

Q. 一度「今年は0円」と決めた後、翌年に全額償却してもいい?

はい、問題ありません。 任意償却は文字どおり「任意」なので、毎年の償却額を自由に決められます。 0円→0円→全額、という流れもOKです。

Q. 均等償却を選んだ後に任意償却に変更できる?

原則としてできません。 最初に選んだ償却方法を継続する必要があります。 だからこそ、最初から任意償却を選んでおくことを強くおすすめします。

Q. 青色申告じゃなくても任意償却できる?

はい、任意償却は白色申告でも使えます。 ただし、青色申告の65万円控除と組み合わせたほうが節税効果は大きくなります。

まとめ ── 開業費の償却で覚えておくことは3つだけ

開業費の金額自体は数万〜数十万円程度のことが多いですが、「使うタイミングを選べる経費」は他にあまりありません。 このカードを有利に使うために、任意償却のルールだけは覚えておいてください。

→ 前の記事:開業費とは?いつの日付で・何を入れるか解説

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