2026.07.15
開業届の書き方|個人事業主が迷う12項目をひとつずつ解説【2026年版】
個人事業主として開業しよう、と決めた。
でも最初のハードルは、仕事の内容ではなく「書類の書き方がわからない」だったりします。
開業届(正式名称:個人事業の開業・廃業等届出書)は、全部で21項目ありますが、実際に記入が必要なのは12項目ほど。
5分あれば書き終わります。
この記事では、所長が実際に開業届を出したときに迷ったポイントを中心に、記入項目をひとつずつ解説します。
先に結論
- 開業届の提出期限は開業日から1ヶ月以内
- 提出方法はe-Tax(オンライン)・郵送・窓口の3つ
- 記入するのは約12項目。迷うのは「屋号」「開業日」「事業の概要」の3つ
- 青色申告承認申請書も一緒に出すのがおすすめ(開業日から2ヶ月以内)
- freee開業やマネーフォワード開業届を使えば、質問に答えるだけで自動作成できる
開業届とは?出さないとどうなる?
開業届は、個人が事業を始めたことを税務署に届け出る書類です。
所得税法で「事業開始から1ヶ月以内に提出する」と定められています。
ただし、出さなかった場合の罰則はありません。
「じゃあ出さなくていいのでは?」と思うかもしれませんが、以下の理由で出しておいた方が圧倒的に有利です。
| 開業届を出すメリット | 詳細 |
|---|---|
| 青色申告ができる | 最大65万円の特別控除を受けられる。開業届なしでは青色申告の承認申請ができない |
| 屋号で銀行口座を開設できる | 事業用口座を持てるので、プライベートと分けやすくなる |
| 小規模企業共済に加入できる | 掛金が全額所得控除。個人事業主の退職金代わり |
| 社会的な信用 | 融資・契約の際に「個人事業主として開業している」証明になる |
特に青色申告のメリットは大きい。65万円の控除があるかないかで、税金が数万円〜十数万円変わります。
→ 青色申告とは?個人事業主が最初に知るべきこと
記入項目 ── 迷いやすい12項目を解説
国税庁の様式は全21項目ありますが、個人事業主が新規開業する場合に記入するのは12項目ほど。それぞれ見ていきます。
① 税務署名
自宅住所を管轄する税務署の名前を記入します。
どこの税務署かわからない場合は、国税庁の「税務署の所在地などを知りたい方」ページで郵便番号から検索できます。
② 提出日
実際に提出する日を記入。書類を作成した日ではありません。
e-Taxの場合は送信日、郵送の場合はポストに投函する日が目安です。
③ 納税地
「住所地」「居所地」「事業所等」の3択。
ほとんどの方は「住所地」でOK。自宅で開業する場合は、自宅住所をそのまま記入します。
バーチャルオフィスの住所を納税地にしたい場合は「事業所等」を選び、その住所を記入します。ただし、実態として事業活動の拠点であることが求められるため、単なる住所貸しの場合は自宅住所の方が無難です。
→ 個人事業主向けバーチャルオフィス4社比較
④ 氏名・生年月日・個人番号
住民票の通りに記入。個人番号はマイナンバー(12桁)です。
e-Taxで提出する場合は、本人確認書類の添付は不要です。
⑤ 職業
ここで迷う方が多い。できるだけ具体的に書きます。
| △ あいまい | ◎ 具体的 |
|---|---|
| フリーランス | Webデザイナー |
| 自営業 | ライター |
| IT関係 | ソフトウェア開発業 |
| ネットビジネス | アフィリエイト広告業 |
職業は後から変更届を出せるので、現時点で一番近いものを書けばOK。
複数の仕事をしている場合は、メインの仕事を1つ書きます。
⑥ 屋号
空欄でもOK。屋号がなくても開業届は受理されます。
屋号をつけるメリットは、屋号名義で銀行口座を開設できること。
「○○デザイン事務所」「□□制作室」のように、事業内容が伝わる名前にしておくと、取引先への印象も良くなります。
後から屋号を変更・追加したい場合は、確定申告書に記載すれば反映されます。
⑦ 届出の区分
新規開業なら「開業」に○をつけるだけ。
⑧ 所得の種類
ほとんどの方は「事業(農業以外)所得」に○。
不動産賃貸業の場合は「不動産所得」を選びます。
⑨ 開業日
ここも迷いやすいポイント。
「開業日」に法的な定義はありません。事業を始めた日を自分で決めて記入します。
目安になる日付としては:事業用の名刺を作った日、最初の営業活動をした日、初めて売上が発生した日、開業届を出す日、など。
迷ったら「事業のために最初にお金を使った日」にしておくのが無難。
開業日より前に購入したものは「開業費」として経費にできるので、開業日は早めに設定しておく方が有利です。
→ 開業費とは?いつの日付で・何を入れるか
⑩ 事業の概要
職業欄よりも具体的に書きます。「何をして、誰に、どうやって提供するか」がわかるレベルが理想。
| △ あいまい | ◎ 具体的 |
|---|---|
| デザイン業 | 企業向けWebサイトのデザイン・制作 |
| ライター業 | Webメディアへの記事執筆・編集 |
| IT業 | スマートフォンアプリの開発・運営 |
| 配達業 | フードデリバリーサービスの配達業務 |
後から変更届を出す必要はなく、事業内容が変わっても確定申告書に記載すればOKです。
⑪ 青色申告承認申請書の提出の有無
青色申告をするなら「有」に○。
これが最も重要な選択です。詳しくは後述の「青色申告承認申請書を一緒に出す」を参照してください。
⑫ 従業員の有無
一人で事業をしている場合は、従業員に関する項目はすべて空欄でOKです。
家族に給与を払う場合は「青色事業専従者給与に関する届出書」が別途必要です。
提出方法 ── e-Tax・郵送・窓口の3つ
| e-Tax | 郵送 | 窓口 | |
|---|---|---|---|
| メリット | 24時間提出可能、本人確認書類の添付不要 | 税務署に行かなくていい | その場で不備を確認してもらえる |
| デメリット | マイナンバーカード+ICカードリーダーが必要 | 郵送代がかかる、到着まで時間がかかる | 平日に税務署へ行く必要がある |
| 所要時間 | 約10分(事前準備除く) | 約5分+郵送日数 | 約5分+移動時間 |
おすすめはe-Tax。自宅から24時間いつでも提出できます。
マイナンバーカードを持っていない場合は、郵送が次善の選択肢です。
💡 2025年1月から「控え」の扱いが変わっています
以前は税務署の窓口や郵送で提出すると、控えに収受日付印を押してもらえました。
しかし2025年1月以降、この収受日付印は廃止されています。
e-Taxなら受信通知が届くので、提出の証拠として保存しておけます。この点でもe-Taxが有利です。
青色申告承認申請書を一緒に出す ── これが最重要
開業届と同時に提出してほしいのが「所得税の青色申告承認申請書」です。
青色申告をすると:
- 最大65万円の特別控除(e-Tax+電子帳簿保存の場合)
- 赤字を3年間繰り越せる
- 少額減価償却資産の特例が使える(40万円未満を一括経費に)
- 家族への給与を経費にできる(専従者給与)
提出期限に注意
青色申告承認申請書の提出期限は開業日から2ヶ月以内。
1月1日〜1月15日に開業した場合は3月15日まで。
この期限を過ぎると、その年は青色申告ができません(白色申告になる)。
開業届と一緒に出してしまうのが一番確実です。
もっと簡単に ── 無料ツールで自動作成する方法
「項目ごとの解説はわかったけど、やっぱり手書きは面倒……」
そんな方には、質問に答えるだけで開業届と青色申告承認申請書を自動作成できる無料ツールがあります。
| サービス | 特徴 |
|---|---|
| freee開業 | 質問に答えるだけで書類を自動生成。e-Tax送信にも対応。スマホ操作可能 |
| マネーフォワード開業届 | フォーム入力で作成。e-Tax送信に対応。会計ソフトとの連携がスムーズ |
どちらも完全無料で使えます。記入ミスのリスクも減るので、手書きにこだわりがなければ使わない理由がありません。
開業届の作成だけでなく、そのまま会計ソフトの利用につなげられるのもメリット。開業初日から帳簿づけを始められます。
→ freee vs マネーフォワード、どっちを選ぶべき?
開業届を出した後にやること
開業届を出しただけでは、まだスタートラインに立っただけ。
開業後に早めにやっておきたいことをまとめます。
- 帳簿づけを始める
開業日から帳簿をつける義務が発生します。会計ソフトを導入するか、まずは無料ツールで練習を。
→ 【実演】会計ソフトに経費を入力してみた - 開業費を記録する
開業日より前に事業のために使ったお金は「開業費」として経費にできます。レシートを集めておきましょう。
→ 開業費とは? / 開業費の償却タイミング - 事業用の銀行口座を開設する
屋号で口座を開設すると、プライベートとの区別がつけやすくなります。 - 経費のルールを把握する
何が経費にできるかを知っておくと、日常の記録がスムーズに。
→ 個人事業主の経費にできるもの一覧
よくある疑問
Q. 副業でも開業届を出せる?
出せます。会社員をしながら副業で個人事業を営む場合も、開業届は提出できます。
会社に副業がバレるかどうかは、開業届の提出とは関係ありません(住民税の納付方法で対策可能)。
→ 会社員が副業で確定申告する場合の解説
Q. 開業届を出すのが遅れたらどうなる?
罰則はありません。遅れて提出しても受理されます。
ただし、青色申告承認申請書の期限(開業日から2ヶ月以内)に間に合わないと、その年は青色申告ができなくなります。開業届と青色申告承認申請書はセットで早めに出しましょう。
Q. 開業届を出したら扶養から外れる?
開業届を出しただけでは扶養から外れません。
扶養の判定は「所得が一定額以下かどうか」で決まります。開業届の提出自体は所得に影響しません。
ただし、加入している健康保険組合によっては「開業届を出した時点で扶養から外す」ルールを持っている場合もあるので、事前に確認しておくと安心です。
Q. 開業届は取り消せる?
事業をやめる場合は「廃業届」を提出します。同じ様式(個人事業の開業・廃業等届出書)で、「廃業」に○をつけて提出すればOKです。
まとめ ── 開業届は「5分で終わる最初の一歩」
- 開業届は開業日から1ヶ月以内に提出
- 記入するのは約12項目。5分で書ける
- 迷うのは「屋号」「開業日」「事業の概要」くらい。後から変更できるので気楽に
- 青色申告承認申請書を一緒に出すのが最重要(開業日から2ヶ月以内)
- freee開業やマネーフォワード開業届を使えば質問に答えるだけで自動作成
- 提出方法はe-Taxが一番おすすめ。自宅から24時間提出可能
開業届を出すこと自体は、とても簡単な手続きです。
大事なのは、開業届を出した後のこと。帳簿づけの習慣を早めに作っておくと、確定申告のときに慌てずに済みます。
「書類を出す」という小さな一歩が、個人事業主としてのスタートラインです。